国税局の仕事って面白いんだな、いろいろな人がいるなあ、と思っていただけるように文章を書いております。成功した思い出も失敗した思い出もたくさんありますが、その中でもお酒の失敗は多々あります。
みなさんお酒が好きですから、毎日のように飲みに行くことは以前にも述べました。ぼくが研修を終えて現場に配属されたのは7月の中頃です。それから少し働くと、すぐに夏休みになります。まだなにもできない赤ちゃん職員なので、出勤しても掃除くらいしかできません。周りの先輩たちが交代で休みを取っている状況で、ぼくに何かを説いたり導いたりする時間はない。新人はみなさんよりやや多めに休暇を取ります。
はじめての大人との飲み会
夏季休暇を翌日に控えた日、連調官から「今日の夜、空いているか」とお誘いを受けました。参加者は、統括官と上席と連調官で構成された10人ほど。若手はぼくだけです。キープしている浦霞の一升瓶をみんなで飲みました。もしかすると、ぼくの人生でははじめての大人との飲み会だったかもしれません。
いままでカクテルや発泡酒ばかり飲んでいた大学生が、美味い日本酒に出会うわけです。男性同士とはいえ、新人に興味があるおじさんたちは、横に来ては酒を酌み交わしてくださいます。ぼくは、仲間として受け入れてもらいたい気持ちがあったのか、酒の強い男になりたいという腕白な心があったのか、飲みすぎてしまいました。
2時間後には、絵に描いたような酩酊状態。まともに歩くこともできません。店を出て、そのビルの1階に降りる階段で転げ落ち、外に出ていた「本日のおすすめ」と書かれた黒板を倒してしまいました。店は2階にありました。
そのまま二人の統括官に、アメリカで見つかった宇宙人のように抱えられて、タクシーに押し込まれます。ぼくを誘った連調官ではなく、その日初めて話した統括官が、呂律の回らないぼくから現住所を聞き取り、家まで同行してくれました。
自宅に着いたぼくは、眠ることはなかったものの意識は朦朧としていて、簡単な挨拶だけしてタクシーを降りました。タクシー料金のことなど考えもしませんでした。
タクシーの後ろ姿を追うことなく、自宅のカギを開け、トイレに駆け込みました。次の日が休みで良かった。ベッドで眠りにつく中で、1週間後に出勤したときどの面下げれば良いのか思案しましたが、ぼくの経験では解答を出すことはできませんでした。
1週間後
勤務時間より1時間早く出勤すると、連調官はもうパソコンと睨み合っていました。荷物を机に置き「おはようございます。先日はありがとうございました。ごちそうさまでした」と挨拶すると、ぼくの方を一瞥することもなく「ご馳走してないよ。4000円」と手を伸ばしてきました。
大変勉強になります。上司と飲んでも割り勘なのです。当然のように奢ってもらえると考えていたぼくは、世間知らずの大馬鹿野郎でした。その後、統括官や上席と飲むときは基本的に割り勘で、ご馳走してくれるのは年の近い先輩だけだと知ることになります。
しかし、タクシーで送ってくれた統括は「無事で良かったね」とタクシー代を受け取ってくださいませんでした。勇退した今でも、その統括とは年賀状のやり取りをしています。