こんにちは、さんきゅう倉田です。元東京国税局職員で、現在は吉本興業所属の芸人をしながら、東京大学経済学部で経済学を学んでいます。
法人会、税理士会、商工会議所、青年会議所、医師会、労働組合、各企業の社内研修など、税金や税務調査をテーマに講演をする機会をいただいています。今回はその講演内容をベースに、税務調査について普段あまり語られない現場の話をお伝えします。
そもそも誰が、いつ、何のために来るのか
税務調査というと、なんとなく怖いものというイメージがあると思います。でも、構造を理解すれば、過度に恐れる必要はありません。まず押さえるべきポイントは次のとおりです。
- いつ来るのか
- 誰が来るのか、何人で来るのか
- 事前予約はあるのか
- 何日くらいかかるのか
- 何をするのか
- 内観調査と反面調査の違い
- 過少申告加算税と重加算税の違い
- 「4点セット」とは何か
これらを順に解説していきますが、今回特に強調したいのは、税務調査は業種によって入りやすさが大きく違うという事実です。
運送業界が令和4年に「不正発見割合1位」だった
国税庁は毎年、「法人税の不正発見割合の高い業種ランキング」を発表しています。これは実際に税務調査に入って不正が見つかった割合の高い業種です。過去のランキングを見ると、運送業界の動きが面白い。
- 令和3年 「その他の道路貨物運送」が10位(不正発見割合28.8%)
- 令和4年 「その他の道路貨物運送」が1位(32.8%)、「貨物自動車運送」も10位(27.3%)、「運輸附帯サービス」が不正所得金額で4位
- 令和5年 「運輸附帯サービス」が不正所得金額で2位(63,695千円)
- 令和6年 運送関連が上位から消える
つまり、令和4年から5年にかけて、運送業界に集中的に調査が入った可能性が高いということです。国税庁は業種ごとに調査の重点を変えていて、ある業界に集中的にリソースを投下する年があります。
国税庁はAIを使い始めた
ここ最近の大きな変化として、国税庁がAIを活用した予測モデルで調査対象を選定していることが挙げられます。
令和6事務年度の追徴税額は法人税・消費税で3,407億円となり、直近10年で過去最高を記録しました。実地調査の件数は前年比7.4%減で減っているのに、追徴税額は6.6%増です。
調査される側からすると、適当な処理は確実にバレる時代になった、ということです。
重点課題は3つ
国税庁は次の3分野を重点課題として位置付けています。
- 消費税還付申告法人(不正還付) 総額299億円の消費税を追徴。うち51億円が不正計算
- 海外取引法人(タックスヘイブン等の租税回避) 海外取引に係る申告漏れ所得2,096億円を把握
- 無申告法人 総額355億円の法人税・消費税を追徴。うち228億円が不正計算
特に海外取引と無申告は、AIと国際的な情報交換の進化で発覚が一気に増えています。
「簡易な接触」も増えている
実地調査だけでなく、最近は書面照会、電話連絡、来署依頼による面接という、いわゆる簡易な接触も増加しています。令和6事務年度の簡易な接触の件数は8万5千件、前年比13.4%増で、追徴税額は265億円。実地調査が減っている分を簡易接触でカバーしている形です。
簡易接触は実地調査よりはるかに軽い対応で済みますが、「ちょっと申告書見直してください」という連絡が来た時点で、何かしらの違和感を持たれているサインです。放置せず、税理士さんと相談して対応しましょう。